神谷 鉄平

地域特性を活かした都市公園評価システムの開発

前田研究室 神谷 鉄平

 

1.はじめに

近年、公共事業に対して透明性・正当性が求められており、それによってもたらされる様々な効果を分析・評価することが必要となってきている。しかし、公園事業については整備することで生じる価値が様々でその効果が大きいこと、対象が非市場財であるため便益の経済的価値の計測が困難であるなどの理由で事業の評価が困難なものとなっている。

このような現状の中、公園事業に関しての評価手法マニュアルが作成されたが、このマニュアルでは公園の持つ価値が“公園の規模”と“公園からの距離”の要因で計測されており、地域性が評価に考慮されているかは疑問である。そこで本研究では、この評価手法マニュアル「小規模公園費用対効果分析手法マニュアル」1(以下、小規模公園マニュアル)を取り上げ、より地域性を評価できるように改良することを目的とする。

 

2.公園評価の枠組み

公園評価の枠組みの概要を以下に示す。

 

・評価対象項目

公園の持つ価値のうち、人が公園を利用することによって得られる価値(以下、利用価値)を評価対象とした。

 

・評価関数

利用価値を評価する関数を確定項と確率項の和からなるランダム効用モデルによって定義する。

公園の利用には、公園の属性のみでなく個人の属性も影響しているのではないかと考え、効用の確定項を、公園の属性と個人の属性からなる以下のモデルによって定義する。また、確率項はガンベル分布に従うものとする。

 

 


ここで、公園の属性の変数として、は公園の規模、は公園までの距離、は駐車場の台数、はユニバーサルデザインの有無、個人の属性の変数として、は個人の収入、は小中高生、は学生、は労働者、は非労働者、は18歳以下、は20代、は30代、は40代、は50代、は60代、は70代、はパラメータである。なお、変数はダミー変数を用いて定義した。

利用価値を便益として算出するため、公園利用者の満足度を定義した。公園の選択確率を考慮すると、満足度と効用との関係は次式で表される。

 

 


なお、は公園が箇所ある場合に、公園を利用することで得られる効用を表す。この関係式から、評価対象とする公園から得られる個人の満足度はで求められる。

本研究では、満足度をトラベルコスト法の理論を用いて、個人の年間旅行費用で測定しているため、満足度の差が年間便益となる。

 

3.評価モデルの選択

浜松市民の公園利用の実態と、利用者の属性についてのアンケート調査を浜松市内の4公園を対象に行い、この結果を元に、重回帰分析を用いた変数増減法を用いることで、適切な評価モデルの選択を行った。その結果、公園の属性の変数と個人の属性の変数からなるモデル

 

 


が得られた。なお、このモデルの決定係数は0.20であった。推定された各パラメータの値を表1に示す。

表1:パラメータ推定結果

 

 

 

 

 


4.便益の算出結果と考察

上記モデルを用いて公園の持つ利用価値の単年度便益を算出する。便益の算出は、公園周辺の人口から利用者数を算出し、利用者を属性別に分類、評価関数で属性別の便益額を算出し、各属性の便益を合計するといった手順で行った。なお、算出結果は表2の通りである。

表2:算出結果

 

 

 

 


公園の属性に加え個人の属性から算出された便益も含まれているため、既存のモデルで算出される便益よりも、公園利用の現状に即している便益が算出できたと考えられる。

 

5.結論

本研究では、人の属性によって公園の利用に違いがあり、それに応じて人にとっての公園の価値に変化があるということを明らかにした。しかし、公園の持つ効用のうち、利用価値の特徴を明らかにしたに過ぎず、公園全体を評価できるまでには至らなかった。今後は、一事業として公園を評価・分析するために、公園の持つ環境価値や災害価値等についての説明要因も明らかにすることが必要不可欠である。



1監修:建設省都市局 公園緑地課, 発行:社団法人 日本公園緑地協会