鵜飼 綾

第二東名浜松・浜北SA道路排水のリスクアセスメント

 前田研究室 鵜飼 綾

 

 

1.     はじめに

浜松市浜北市境で第二東名高速道路の浜松・浜北SAの工事が進んでいる。道路公団浜松工事事務所は広大な敷地に加え周辺環境に合わせた緑化推進をアピールするが、道路排水がSA調整池を経由し取水口上流の灰ノ木川に流れ込み、水道水に悪影響を及ぼすのではという懸念が出ている。そこでSA道路排水のリスクアセスメントを行うことにより排水中のどの種のリスクがどの程度の大きさで起こり得るか推定し、最適な管理方法決定への示唆を与えることを本研究の目的とする。

 

2.     研究の枠組み ~リスクアセスメント~

リスクアセスメントは有害危険性のリスクを評価することであり、以下の4段階を経て行う。

ハザード同定 (hazard identification)

評価の対象となる有害危険性化学物質を同定する。

曝露評価 (exposure assessment)
化学物質を扱う過程でヒトや環境にどれだけ排出し、曝露するかを評価する。

量・反応の関係の推定 (dose-response assessment)

化学物質量とその危険性が発現する関係を把握する。

リスク判定 (risk characterization)

曝露量が量・反応関係のデータから見てどの程度のリスクが発生する可能性があるかを判定する。

ただし、リスクアセスメントのプロセスとして量反応関係の推定と曝露評価は上下関係を持たない。

 

3.     ハザード同定

有害危険性物質は既存の研究1を参考にし、道路排水から比較的顕著な流出が認められる重金属9種、トリハロメタン4種及び多環式芳香族炭化水素15種をハザードとして同定した。

 

4.     分布濃度の推定 ~曝露評価~

大阪の都市幹線道路にけるデータ1から各回の降雨量に依存する回帰流出モデルを作成した。を各降雨、を降雨量、を物質流出量とすると、調整池での濃度は以下の式によ求まる。

 

ここでは大阪幹線道路と第二東名との交通量などの差を考慮した係数である。

排水は調整池から河川へと合流する。,を上流河川および調整池からの流量、を上流河川の濃度とすると、完全混合式により混入後の濃度が求められる。

 

浄化率浄水場での浄化率αとすると水道水中の有害物質濃度はにより算定できる。ここで算定された濃度を体重50kgのヒトが一日2ℓの水道水を摂取するとして、生涯経口摂取量LADD(Lifetime Average Daily Dose)を算出する。本研究ではリスク評価のためのソフトウェアRisk*Assistantを用いて算出した。

 

5.     量・反応関係の推定

動物実験で得られた反応関係を用いて健康影響を推定する手法が一般的で、この結果を元に米国EPAは化学物質の健康影響評価や規制情報をIRISデータベースとして公開している。本研究ではこの毒性情報を参照する。内容としては以下のようなものである。

l  参照用量(RfD)[mg/kg/day]:この量以下を摂取しても生涯にわたって毒性が現れないと予測される値。閾値がある物質の評価に使われる。

l  Slope factor[1/mg/kg/day]:1日で体重1kgあたり1mgを摂取し続ける時のリスク値。発癌物質のように閾値のないものについて使用できる。

 

 

 

 

 


6.     健康リスク算定

発癌物質と非発癌物質を以下の式により算出する。

非発癌物質:risk = LADDRfD

発癌物質  :risk = LADD×Slope factor

発癌リスクについて、トータルで1.93×10-5という値が算出された。このうちの大部分はTHMからのリスクである。また、この値は10万人に2人が発癌してしまうという意味を持っている。

非発癌リスクについてはマンガンによるリスクが最も高く、その値は0.069である。THM四物質によるリスク値がほぼ同様な数値でマンガンに続いている。

 

7.     結論

リスク算定については不確実性などの点を考慮し妥当な値を算出できた。

第二東名の建設に伴い、水道水中の有害物量は増加するが、リスク値としての増加はごく僅かである。排水の混入の有無に関わらずTHMによるリスクが圧倒的なことから、今後のTHM管理策の重要性が伺われる。



1新矢将尚,宮川善年,宮西弘樹,笹原伸介,石川宗孝:高速道路における粒径別汚濁負荷の流出特性 , 第4回日本環境学会シンポジウム講演集2001 , pp156 , 2001